想 sougetu 月
 斎の顔が怖い。

 答えられない私に斎が一歩近づいてきた。

「男と同棲でもするつもりだった?」

 同棲は誤解でも、家を出ることは間違っていない。
 私はただ首を横に振ることしか出来なかった。

「最近、頻繁に外出していたのは男と会っていたからか……」
「い、斎……」

 確かに会ってはいたけれど私の彼氏ではない。

「そいつとセックスした?」

 誤解を解こうと口を開いたとたん、斎がとんでもないことを言い出した。

「してない! するわけないよ!」
「本当に?」
「だって、川崎君は……」

 シイナの彼氏だからと続けようとしたとたん、まるで言葉を遮るように、斎は持っていたリュックを乱暴に床に投げつけた。

 見たこともない斎の乱暴な態度と、大きな音にびっくりしてしまって言いかけた言葉が止まってしまう。

 怒っているなんてものじゃない。
 今までケンカした時とは比べようもないほど、斎が興奮している。

 何とか落ち着いてもらおうかと手を伸ばした時だった。

「じゃあ……証拠を見せてよ」
「しょ……証拠?」
「身の潔白を証明してくれって言ったんだよ!」

 何の証拠なのか理解出来ず、伸ばしかけていた腕を斎が容赦なく引っ張る。
 腕に痛みを感じた瞬間、視界が回った。

 気づけば私はベッドの上にいて、私の上に斎がのしかかっていた。
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