想 sougetu 月
 すべて洗い終えた頃、まるで見計らったかのように斎がバスタオルを持って現れた。

 浴槽から出るのもままならなかったので、温まって洗う時には浴槽のお湯は抜いていた。

 入る時はシャツを着ていたけれど、今の私は洗うために脱いでいて何も着ていない。
 慌てて体をちぢめ手や足で体を隠す。

「い、斎!」
「はいはい、もう散々見つくして覚えちゃってるから」
「!」

 恥ずかしがる私に斎はくすくすと笑いながら近づき、バスタオルをかけた。
 持っていたもう1つのタオルで私の頭を拭きだす。

「あ……いいよ、自分で出来るってば」
「いいから、じっとして」
「う……」

 人に髪を拭いてもらうということは初めてじゃない。
 人っていうより、斎に拭いてもらう事だけれど……。

 お風呂の中は温かく、すぐ近くにある斎の存在に体の力が抜けていく。

「こうして拭いてもらうのって久しぶりだね」
「ああ。……そういえば、昔、1度だけ一緒に風呂に入ったことあったな」
「ん」

 斎の言葉に記憶が呼び覚まされる。
 
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