想 sougetu 月
「月ちゃん、知らないの? いとこ同士は結婚出来ないんだよ! 血がつながっていると『きんしんそうかん』って言って、法律で禁止されてるんだよ」

 この言葉を聞いて、私の初恋は砕けた。

 父の兄の子。
 それが斎だ。

 斎とは、祖父のお葬式で初めて出会った。
 転勤の多い父のせいで、今まで親戚関係と会うことがなかった。

 祖父母の家には何度か遊びに行っていたので、祖父が亡くなって悲しかったことは覚えている。

 しかし、もっとも印象的なのは、生まれて初めて身近に感じる死。
 硬く、冷たくなってしまった祖父に怯えていた時、手を繋いでくれたのが斎だ。

「大丈夫?」

 優しい声に顔を上げれば、私の大好きな特撮ヒーローのキャラクターがプリントされたハンカチが差し出されていた。
 
「これ、あげる。買ったばっかりだから綺麗だよ。使って?」

 優しく微笑んでいるのは見たこともないほど整った容姿の男の子。

「僕の名前は青柳 斎」
「あ……、私、……月子。柚原 月子」
「つきこちゃん?」
「ん……」

 確認されて頷く。

 右手にはハンカチ。
 左手は繋がれた暖かな手。

 葬式が終わる2日間。
 斎はずっと私の側にいて、あれこれと世話を焼いてくれた。
 
 斎が自分のイトコの中で唯一の同じ年だったからか、色んな事をたくさん話したのもこの時だ。
 そして、優しく絵本に出てくるような王子様の斎に、幼いながらに淡い初恋を抱いた。
 
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