君がいるから
(気のせい……かな?)
――♪~……♪~♪♪♪――
(まただ。気のせいじゃない)
何処からとも無く耳に届くメロディー。でもそれはとても、小さく時折途切れ聞こえる。辺りを360度見渡してみたすけれど、誰の姿もなくただ首を傾げるだけ。
「誰が歌ってるんだろう?」
女の人のようにも聞こえるその声は、とても透き通っていて綺麗な歌声。何故か、それがとても気になって、目を閉じて耳を澄ませ一つに意識を集中。
――♪~♪~♪♪~~♪――
――♪~~♪♪♪~~♪~~――
聴き入っていると、次第に口元が緩んでいくのが、自分でも分かる。すごく素敵な歌――胸の中がほんのり温かくなっていく。
――♪~……っち♪――
――こ、っちだ……よ――
「え?」
歌に交じって聞こえた言葉によって、目を開いて誘われるように足が勝手に動き出す。自分自身、何処に向かうのかさえ分からないのに、自然と足が動き歩廊を進んでいく。歌声は途端に消えてしまったけれど、どんどん前へ。
進み続けていく中、まだ通ったことのない歩廊を歩き続けること、数分だったと思う。とある扉の前でふと立ち止まった。
「……ここって」
奥まったところにある為か、周りを含めて少し薄暗い。それに、この場に足を向けたのは初めての事で、真っ直ぐの道のりではなく曲がり角が何度かあったのにも関わらず、迷うこともなく来れたのが不思議。
――♪~♪~♪♪♪~――
消えたはずの歌が、扉の向こうから流れてきた。扉に耳を当て確認をすると、やっぱりこの部屋の中に歌声の主がいるよう。
そこでふと思うのは、ジンの時みたいに随分離れた場所にいたにも関わらず、歌が届いたのかまたも不思議に感じずにはいられない。
「ここまで来たんだし……どんな人が歌ってたのか。ちょっと会ってみたい気もする」
まだ、会ったことの無い人物なのかと不安に思う気持ちや、突然訪ねたりして迷惑だろう等、色々自問自答してみるも、やはり綺麗な歌声の持ち主に一目会ってみたいという気持ちの方が勝った。手を構えて振るが扉に触れる寸前で止まり、再び構えるけれど――何度か繰り返してしまう。やっぱりこのまま自室に戻ろうか――うじうじ悩み続ける。
そうして、数分が経って歌声が止んでしまい、悩んだ末に深呼吸をした後に唇を結ぶ。手を構えて、今度は扉を数回叩いた――。