君がいるから
「とにかく無事でよかった」
「本当に、ごめん」
「もう、それ以上言わなくていい。それより……あきな、ギルは?」
「え……あっ!! ギルならあそこに!!」
肩に置かれたウィリカの手に力が込められ、はたっと気づき慌てて指で示す。私の指先を追っていった先で、ウィリカの目の色と顔つきが変わった。
「ウィリカ?」
「あ……あいつは」
瞳を大きく見開き、それ以上口を開かないウィリカ。肩から重みがするり落ちた気配に、ふと下方へ視線を落とす。力を込めるあまりに震えているウィリカの拳がそこにあった。
「ウィリカ!! それ以上、力入れないで!!」
咄嗟にウィリカの手に、自分の手を重ね叫ぶ。
「……あきな?」
「それ、以上したら。ウィリカの手が」
白い肌の指間から流れ落ちていく、赤い滴。シャンロの指に巻いたハンカチの残りを取り出し、掌にあて巻き付ける。
「ありがと。大丈夫だから」
「う、ううん。痛むようだったら、ちゃんと手当してね」
「ああ。だが、それよりもあいつのことを片付けないとな」
未だ鳴り響く金属同士の交差する音の方へ目を向けた。その時。
「かはっ!!!」
ギルの苦痛の叫びが耳に届く。
「ギル!!」
私とウィリカのギルの名を呼ぶ声が重なる。腕から血を流し、息苦しそうに肩で息をするギルが、ふらつきながらも再び立ち上がり相手を鋭い目つきで見据え、剣を強く握り直す。肌の所々に銀髪につけられた傷口からは滴る血。
「あっれ~どうしたのさ~。さっきまでの勢いが全然ないよ? もう終わりなの? つまんないなぁ、もう」
「はぁ、はぁ……んなわけ、ねーだろーがっ!! 妙な技使いやがって……正々堂々と勝負しやがれっ」
ギルの放った言葉の意味を理解出来ずにいる私とウィリカの先で、先ほどと同じように指の骨をパキパキと鳴らす銀髪のその動作が気になった。銀髪の様子から、ギルがおされているのは一目瞭然。それでも尚、ギルは瞳に闘志を燃やし相手に立ち向かって行く。
「ウィリカ……ギルが! これ以上戦ったら、ギルが」
「そうだな。僕も奴には怨みがあるから、ギルにだけやらせるわけにはいかないよな」
「怨み?」
ウィリカはそう言って身に着けている剣を鞘から引き出そうと、グリップに手をかけた時――。
ザザーッ!!
「ウィリカ……余計なことはすんな!!」
私達の傍へと、突然飛び降り立ったギルは背を向けたまま叫んだ。