君がいるから


「余計なこと!? お前だけで太刀打ちできる相手じゃないことは分かってるだろっ。俺だってな――」

「いいから、手出しすんじゃねー!! 俺、様はぜってー負けねー、いいな!! ぜってー手出しすんじゃねーぞ!!」

「ギル!!」

 ギルが再び相手に飛びかかろうとした瞬間に、ギルの名を叫び呼び止める。私の声にギルの動きが止まり、背を向けたままこちらを見ようともしない。

「ウィリカ。その女、連れてこの場から早く離れろ」

「何言ってんの……ギル1人じゃ危ないよ!! 一緒に逃げよう? それでネゼクさんとか皆を連れて……大勢で――」

「はっ逃げるだ? 冗談じゃねー、そんなかっこわりー事出来るか。あの野郎と決着がつくまで俺様は。ぜってー何があろうと、今度は背を向けて逃げたりしねー!」

(決着って――ギル……まさか)

「ウィリカ、俺様の命令だ!!」

「――分かった」

「ね~? 話まだ終わらないわけ~? ず~っと、こっちは待ってあげてるんですけど」

 剣をまるで杖のように扱い、余裕を見せ欠伸をする銀髪。あの人は、息も切れていない。それに、剣を振るう時も何故あんなに愉快気に――。

「さぁー、行くぜ! てめーをぶっ倒す!!!」

「嬉しい言葉だね~。でも僕は強いから、きっと君とはここでさよならだ」

「そんな口きけるのも今のうちだーー!!」

 相手の言葉に挑発され、ギルは再び地を蹴り飛び掛っていく。

「これで終わりだー!!」

 ギルの動きは私の目で追うのもままならず、既にギルは銀髪の目前へと迫り、銀髪はギルの刃を避け切れないだろう――そう思った瞬間。

「……え?」

「何!?」

 私の驚きの声は、ギルと同時に上げた声が重なる。
 それは、銀髪目掛けて剣を振り下ろした刹那――銀髪の姿が一瞬にして消えてしまったからだ。ギルはそのまま地に降り立つと、辺りを険しい表情で見渡す。私もウィリカも同じように辺りに目を配る。

「楽しみを邪魔されると、本当苛々するよ」

「っ!!」

 突然の声音に、私とウィリカは同時に振り仰ぐ。

「あぁ……ちっ。お前、折角の楽しみの途中に割り込んできたくせに、僕に命令しないでくれないかな」

 私の傍ら――横方に立っている人物の気配に、身動きが出来ず、生唾を1つ呑み込む音だけが、嫌に大きく耳に届く。


< 270 / 442 >

この作品をシェア

pagetop