君がいるから
* * *
突然、自分達のいる場から駆け出したあきなの背中を、ただ茫然と消え行くまで見つめている男2人の姿。
「ちっ! あの女、勝手に動きまわりやがって――ってウィリカ、何してんだ」
おもむろに足の向きを変え歩み始めるウィリカに問いかけるギルの表情は、不機嫌を露わにしている。そして、ぎらついた瞳をギルはその方へ視線を移すと、そこには床に横たわる男が1人――。
「誰だ、そいつ」
「さぁ? ただ、あきなの知り合いということは間違いないんじゃない?」
そう言ってウィリカは、苦しげに呼吸を繰り返す男の前で膝をついて身をかがめる。滴りおちてくる汗で白灰の髪が張り付く額に、ウィリカは掌を当てた。
「高い熱だ。とりあえず……頼まれたからには処置しないと」
「はぁ!? 何言ってんだ、お前。勝手に押し付けられただけだろうが」
「まぁ、たしかに。そうだけどね」
「だったら、んな奴ほっとけ。それより、俺様を先に治療しろっ」
ギルの相変わらずな俺様な態度に、ウィリカはにっこり微笑む。
「ギルなら大丈夫でしょ? そんな怪我すぐ治る」
「あぁ!?」
「それだけ元気な声出せてれば、どうってことないって証拠」
ウィリカがそう言うと、ふざけんな――と背後で文句の言葉が次から次へと飛んでくる。けれど、そんなギルを無視してウィリカは目の前の人物――レイを安全な場所へ移動させようと、抱き上げ連れて行こうとした時だった。
「そこにいるのは誰ですか!?」
突然耳に届いた警戒の声に、ギルもウィリカもその方へと顔を向けた。
「あなた達、一体何者ですか!? まさか、ゾディックの――」
木の棒を震える両手で持ち構え、鋭い目つき――警戒の眼差しを2人に向ける年配の女性。
「その格好を見る所――このお城の女中さんですか?」
「だったら、どうだって言うんだい!?」
「女中? こんなババァでもなれんだな」
「ギル、女性に対して失礼だろ」
ギルの呟いた一言に、更に眉間の皺を寄せ睨みつける女性に、ウィリカは口端を上げて開く。
「そう睨まないで下さい。僕達はゾディックの者じゃありませんよ」
あなたと争う事に僕たちにはメリットはありません――そう付け足して、ウィリカは告げた。