君がいるから
「なら、あなた達は何者ですか!! このような所で何をしていたのですか!?」
警戒心を解かず問い返され、ウィリカは天を見上げた後、視線を戻し再び微笑む。
「あきなを送り届けに来た者です」
――あきな――
その名に女性の動きが止まる。
「それと。彼女から、この方を頼まれました」
指示すウィリカの指を辿って見遣った先に、予想していなかった人物が横たわっている。
「レヴァイス様!? 何故このような場所に」
「この方を安全な場所に連れて行きたいんですが」
女性はウィリカの言葉に不審を抱く。本当にあきなを連れて来た者なのか。現にあきな本人の姿は何処にも見当たらない。ただ、傍でぐったりと横たわる我が国の王子。そして、ここで我が主を取り戻せても、果たして非難場所まで1人、連れ行けるのか――。あんなにも息苦しそうにしている姿を目にして、考えている時間はないのではないか。そうして女性が出した結論。
「非難場所までご案内致します」
「よかった。よろしくお願いします」
女性の一言に、ウィリカは再び微笑む。
「僕がこの方を運びますので。ギルは……自分で歩けるな」
「あぁ?」
「まぁ、お前だから平気そうだな。足は打撲程度だろうし、歩くには問題ないか」
横たわったままの人物を、細い体のどこにそんな力があるのか――軽々とレイを抱き上げてしまうウィリカ。
「まさか、男をこんな風に抱き上げる時がこようとは……想像もしてなかったなぁ」
呟き肩を微かに落とすウィリカの抱き方は、背と膝裏に腕を回す形。本来なら男に対する抱き方ではない。
「まっいっか。それじゃ、行きましょうか」
「1つ、申し上げておきます」
女性は真っ直ぐにギル――ウィリカに強い眼差しを向け言い放つ。
「全てを信じたわけではありません。それだけは覚えておいて下さいまし」
「はぁ? っんだと、ババァ」
「ギル」
制止するウィリカの一言に、ギルは舌打ちをする。
「分かりました。とにかく、彼を安静に出来る場所で、寝かせてあげましょう」
ウィリカが向けた笑みにそっと視線を逸らす女性は、彼等に背を向けて何も告げず歩み始めた。
「っと、俺様はあの女を連れ戻しにでも行くか」
「ギル、そんな腫れた腕で行ったって何も出来ないよ。それに大丈夫だよ、あの子は」
「何の根拠があってそう言うんだよ」
応えない代わりにウィリカは、これで恐らく僕達の当初の目的へと変わるだろう――静かに微笑んだ。