君がいるから
あの夢の光景が目前に広がる――倒壊する家屋、燃え盛る炎と黒煙、残酷で無惨にも切り裂かれ血に染まった亡骸。その現状を目にして、すぐにでも背けてしまいたい衝動に駆られる。こんな事が実際に起こっている。何もかもがただの夢――そう、目が覚めたら、ただの怖い夢としていられるのに。
(……嫌、ただの夢なの。ただ――怖くて残酷な夢を見てるだけなんだ)
でも、瞳に映る光景や鼻に付く匂い、肌に落ちる小さな雫は紛れもなく全てが現実だ。それでも、認めたくない思いが固く私の瞼を閉じさせようとした。
「ぁっつ!!!」
再び熱が指先から、ドクンドクン脈を打つのを感じ、何かに反応してまた指輪が光っているのかと思い眼を遣る。
「えっ!!!」
そこで私が目にしたものは、一筋に伸びた赤の光。光はどこか一点を射し示す。辿り見ると、それは何処までも続いていく。
「っ頭が……痛い」
再び頭に襲う激しい痛みに、顔を顰め気休めにならないのにも関わらず、頭に両手を当て指先に力を込める。
――ハヤク――
「な……に」
――ハヤク――
「幼い、子供の声? あなたは……誰なの」
――ミンナ――
「っ……ぁっ……ぃっ」
――キミノマエカラ……キエルヨ――
(っ!!)
キエルヨ――この言葉が一際耳元の近くで鮮明に聞こえたと思ったと同時に、痛みが一瞬にして消え去り瞼を見開く。そして、一筋の光を見つめ光が指す方向を真っ直ぐに見据える。
「この方角に……きっといる」
決心をしたと同時に、行く手を阻むむように倒れた無数の亡骸を避けながら地を走り、街へと続く階段を駆け下りる。階段を降りきった先では、鉄同士が激しく衝突し合う音が届き、生々しく飛び散る赤に吐き気が襲う。また立ち止まりそうになったけれど、歯を食いしばって大勢の騎士達が剣を交える戦闘の最中を駆け抜けようと今一度覚悟を決める。真っ直ぐ、あの人がいるだろう先を見据えて。
――あきな――
あの人の私を呼ぶ声を聞きたい。あの人が微笑む顔が見たい。