君がいるから
「おらっ来い! グズグズするなっ」
「っやだ!! 離して!!」
自分達の元へ引き寄せようとする中、私は必死で拒み抵抗。でも、どんなに抗っても2人の男の力になんて勝てるわけも無く、手首を強く握られ引かれる。踏ん張っていた足元が、自分の思いとは裏腹に徐々に地面を引きずりながら動いていってしまう。
「ちっ、強情な女だな。おいっお前、こいつの背後に回って担げ」
「了解。おらっとっとと行くぞ」
腕を掴む男がもう1人の男に指示し、背後に回ってきた男が私を担ぎ上げようと腰に腕を回す――。
「いやーっ!!」
ザシュッ!!
腕にあった感触と鈍い痛みが消え去ると共に、ドサッ――と重みのあるものが地面に倒れ落ちた音が。ハッと我に返り、叫んだ勢いで固く閉じた瞼を開き、その方を見る。
ザシュッ!
「ぐわぁーー!! かっは……」
ドサッ!! カランッカシャンッ……
次に私の腰に腕を回してきた男が臨終の声を上げたと同時に、私の傍らで吐血し下方へ崩れ落ちた。私の頬にあてがわれていた剣もまた共に落ち、刃が男の最後の表情を映し出す。瞳に映る現状に呆然とし、男の力によってかろうじて立っていた足がふらつき、私も下方へと引き寄せられる――そう思った。
手に温かな感触――力強くて、あんなに焦ってた気持ちが落ち着くような、そんな感覚。そして、体が下方でなく、上方へと引き戻された。
「あきな!!」
その声に、おぼろげな視界のまま声の方へと視線を移す。そこで、出合ったのは――漆黒の瞳。
「……だれ?」
「あきな、大丈夫か!?」
憂慮な面持ちの漆黒の瞳を持つ人。
「おいっしっかりしろ!! 俺だっ分かるか!? あきな!」
呼びかけてくる声、おぼろげだった視界が徐々に鮮明になっていき、しっかりとその主を映し出す――。途端に目前の人物の両袖を掴み、その名を叫ぶ。
「ジンっ」
「正気に戻ったか」
「どうして、ここにっ」
「それはこっちの台詞だ! お前、一体どうやって戻って来たんだ!?」
ドックンッ
ジンの声と重なるように、再び大きく脈が打ち目を大きく見開いた。