君がいるから
ドクンッ ドクンッ ドクンドクンドクンッ
「……一体どうし」
「あきな?」
鼓動が速さを間隔が増していく。自分の鼓動音じゃなく、これは――。
「おいっあきな。 顔色が悪いな、あいつらに何かされたのか!?」
ジンの声にハッと我に返り、彼に言うよりも先に体が動く。ジンをその場に置いて、ふらつく足で先へ。
「何処に行くんだ、あきな。お前は城の地下へ行けっ! そこにジョアン達がいる」
まだ、光は示してる――私が行くべき場所へ。
「人の話を聞いてるのか!? お前は一体、何処に行く気だ!?」
あの黒い大きな剣を手にしたまま、私を追いかけ先へ進ませぬよう立ちはだかったジンに訴える。
「アッシュさんとアディルさんの命が危ないかもしれないの!」
「あの二人の命? お前、何を」
「私……夢で見たんだ」
「夢?」
「そう、すごく怖くて不吉な夢……。私も最初はただの夢だと思った。でも――」
「でも、何だ」
グッと拳を握り締め、一文字に結んだ口を開く。
「全て、現実に起こってる。この街を私は知る筈もないのに同じ場景で。あの夢と同じように燃えてて、たくさんの人が倒れてて……もしかしたらっていうのが、私の中で大きくなって、それで」
「…………」
「信じてなんて言わない。ううん、言いたくない。だって、そんな事現実になって欲しくないから! だから、私は行かなくちゃいけないのっ」
視線を落とし、前に立ちはだかるジンの腕を掴んで先へ進もうと押す。けれど、どうやっても力が抜けている私は、ジンをその場から動かすことは出来ない。
「――否。信じるさ」
そっと、頭上から声が降ってきた。ジンの一言にはたと動きを止めて、視線を上げた先には私に向けられている漆黒の瞳の眼差し。
「ジ、ン」
私の瞳と漆黒の瞳の視線が絡み合う。
「……どうして?」
「何が」
「アディルさんもお城の人もそう……。こんな素性の知れない私を信じて、優しくしてくれて、何で、どうしてって――ずっとそう思ってた」
「お前、だからだろ」
「私……?」
「そうだ、お前だから」
私を射抜くような、真っ直ぐな漆黒の瞳の視線に吸い込まれてしまいそうになる。
「……ジン」
「行くんだろ。あいつ等の元に」
そう言って、私に手を差し伸べてくれたジンの手を取る。
"お前だから"
耳に響く声が、何度も私の胸を熱くさせていく。そして――小さな雫が次第に大きくなり激しさを増す。まるであの瞬間(とき)が迫っているかのように。