君がいるから


   * * *


 ほどなくしてたどり着いた場所。目の前に装飾された大きな扉の前に佇む。

(ここって。龍の間……じゃない)

 いつか足を運んだ龍の間に似た扉を見て、ふと思い出す。今いる場所は、あの部屋と少し雰囲気が違う気がして。

「お前はここで待機していろ」

「御意」

 アッシュさんが騎士さんに言葉をかけると、騎士さんは一礼をして扉の端に通路の向こう側に目をやりながら、足を肩幅に広げて立つ。そして、アッシュさんが扉のノブに手を掛け、引き開ける。

「レイ様、どうぞお入りください」

 何も返答もせずに、アッシュさんの前を通り過ぎ中へと入っていくレイ。私は続けて入っていいものかと、その場で考えていたら――。

「グズグズするな。とっとと入れ」

 冷たい声音が飛んできて、小声ながらも返答をし、私も中へと足を踏み入れた。中へ入りきった頃、背後からアッシュさんが続けて入ってきて扉を閉める。また、注意されるのかと思い、言われる前にレイの背中を追う。

「うわぁ、す……ごい」

 靴音を鳴らしながら足を進めていくと同時に、微かな光できらきら輝く様々な装飾と天井の高さ、足元には赤い絨毯。周りをよくよく見ると、所々数日前の爪痕が残されいた。

(この場所も被害が。きっと、お城の人達が一生懸命直したんだろうなぁ)

 懸命に直している姿を思い浮かべながら歩いていたら、ふいに前を歩くレイの背中に軽く顔をぶつけた。

「ちょっ、急に止まらないで、レイ」

「……悪い」

 レイの背中から顔をひょっこり出して前を覗く。視線の先に――。

「ジン? っと、アディルさん……」

 龍の間と同じように、長いテーブルと数えるのが面倒になるくらいの椅子の数。その中間くらいの場所にジンが座っていて、その背後にアディルさんが立っていた。こちらへ目を向けず、その2人は険しい顔つきで、まっすぐ正面を見つめている。

(あんなに怖い顔して、一体何を見てるんだろう)

 2人の視線を辿っていく先――。重力に逆らうように立たされた真っ赤な髪、鋭い切れ長の目元を持つ人。ボサボサの黒髪と気だるそうに椅子に深く座る人。そして、肩まで伸びた白髪ときれいな顔立ちの人――。

「ギル!? ウィリカ!? っと……?」

 レイの背後から飛び出し、視界に映る人物達の名を呼び叫んだ――1人を除いて。皆が反応し、私へ一斉に視線が向けられた。


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