君がいるから


 つかつかと靴音を鳴らし、ジョアンさんはレイの目前へ。レイは私へ向けていた指先を静かに下ろす。

「私(わたくし)共と一緒に行くとおっしゃりましたね?」

「あぁ、言った」

「では、その前に。あきな様に謝罪して下さいませ」

「ジョアンさん!? 謝罪って……」

 慌ててジョアンさんとレイの間に立ち、両手をブンブン左右に振る。

「いやっ大丈夫です! そんな謝られるようなことでもないですし」

「いいえ、あきな様。これはレイ様の為でもあります。口にして良い事と、悪いことの区別をつけて頂かなくては。言葉は時に人を傷つける事、争いをも引き起こしてしまうということも、知っておいてもらわなくてはなりません」

 ジョアンさんの厳しい目つきの奥に、何か光るものが。こんな事、お城の中でレイに対して言える人は、ジョアンさんだけなのかも。

「どうなさいますか、レイ様」

「…………」

 傍できょろきょろ目を左右動かし、2人を交互に視線を送り様子を伺う私。レイは毎回のごとく、眉間に皺を濃くさせてジョアンさんを睨み付けていて。それでも、ジョアンさんは動じず。

「それではレイ様はお1人で自室へ。私共は2人でお話をさせていただきます」

 ジョアンさんに行きましょう――っと、背に手を添えられ押され、一歩踏み出そうとした時。ぐいっと腕を力強く後方へ引かれ、振り返ると――。

「悪か……った」

 微かに耳に届く呟かれた声。目を丸くしたのは、私だけじゃなくジョアンさんも。

「レイ様……」

「っだよ……。謝罪しろと言ったのはジョアンだ」

「それはそうですが。これまでそう何度お伝えしても、幼かった頃以来お聞きしたことがなかったものですから」

 レイは顔を背け、1人で先に歩き始めてしまう。私とジョアンさんは互いに顔を合わせ、小さく笑った。

「レイ様は本当にあきな様をお慕いしているのですね」

「そう……なんですか、ね?」

 レイの言動は分からないことも多く、突然不機嫌にもなったりもする事多々あって。慕われているのか、懐かれてるのか、正直私には苦笑を浮かべて首を傾げる。

「さっ。私達も参りましょう」

「はい」

 掌を上にして行く先を示され、ジョアンさんと一緒にレイの背中を追う。私の背後から護衛の騎士さんも一緒に歩み出す。そうして、陽が燦々と降り注ぐ庭園を後にした。


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