君がいるから


   * * *


 コトンッ

 ある一室に私たちはたどり着き、暫くして湯気がほのかに立ち上るティーカップが木製のテーブルに置かれる。バスケットに入った焼き菓子も一緒に。
 木製のテーブルには木独特の年輪が描かれた模様、色合いもとても渋い。両対面に10脚ほどある椅子に私達2人は端から並んで腰を下ろし、ジョアンさんは対面する形で座る。
 龍の間よりも、身近に感じる大きさにほっこりしてしまう。

「さっどうぞ。いつも甘いものばかりでしたので、今回はほんの少し大人のお味のお茶ですよ」

「ありがとうございます。いただきます」

 ジョアンさんに勧められカップに手を伸ばし、数回軽くお茶の熱をとってから口をつけた。喉を温かい水分が通り抜けていき、体の内側を温めて潤す。ほんのちょっぴり苦味があるこの味は、コーヒーに似ているかな。グレープジュースに似た色をしてはいるけれど。

「お口に合いましたでしょうか?」

「おいしいです。たまにはいいですね、苦みがあるものも」

「アディル副団長とご一緒だと、甘いものばかりですものね」

 顔を見合わせ微笑み合う。レイは視線を落としてお茶を啜る。その様子を見て、カップをソーサーに戻し置き、両手を腿の上に乗せて背筋を伸ばす。

「あの……お話というのは、やっぱりシェリーの事です、よね」

 私の言葉にジョアンさんも笑みから真剣な面持ちに表情を変えた。まっすぐにジョアンさんを見て、次の言葉を待つ。皺が少し目立つ手がテーブルの上で重なり、薄く口が開かれた。

「そうです。シェリーの事について少しだけお話をしたいと思い、あきな様にお時間を頂きました」

「……はい」

「これからお話するという事は、シェリーにはお伝えしておりません。私の独断です。ですから、なんら変わることなく、そのままのあきな様で彼女と接して下さい」

 声にする代わりに一つ頷く。ジョアンさんは微かに息を吐き出し、再び口を開いた。

「あの子は常に強気に見せてはいますが、それには一つの事情があります」

「事情……」

「シェリーは元々この国の生まれではありません」

 そうしてジョアンさんから、シェリーの過去が語られる事となった。


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