夜明け前


母様が入院した次の日。


ガラッ


「しゅー、帰ろ」


「…さく」


そう言って久しぶりに私を迎えに来た、さく。


女子の熱い視線に気づいていないかのように歩いて来て。


「買い物して帰ろう。晩御飯、なに食べたい?」


さら、と私と同じ、色素の薄いブラウンの髪を揺らして、首を傾げるさく。


…あ、誰か倒れた。


「しゅー、…疲れた?」


「…ううん、平気。帰ろ」


「ん、行こう」


ひらひらと差し出されるさくの左手。


繋いでいいものなのか…。


すっごく微妙。


どうしよう。


「…なに百面相してるの。行くよ」


「あ、うん」


ぎゅっ、と強く繋がれた手。


不安で曇っていた私の心が、晴れて行くのがわかった。


だけど、彼女とはどうなったのかな。


妹にまで嫉妬はしないか?


いや、無いとは言いきれない。


…恋する乙女は恐ろしいんだ。


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