夜明け前
「―コホコホッ」
少し喉の痛みと息苦しさを感じて目が覚めれば、外はまだ夜明け前。
ほとんどの生き物がまだ眠りについている時間。
とても静かで、昼間の喧騒が嘘のよう。
隣ではまだ深く眠るさくがいて、その綺麗な寝顔を見つめる。
母様が亡くなってから、夜眠れなくなっていたのにさくが気づいて、狭いベッドで手を繋いで眠るようになった。
―他人から見れば、おかしいのかな。
だけど、温もりを感じなければ不安で眠れない。
きゅっとさくの手を握る。
「…しゅー?…眠れ、ない?」
「ん、ちょっと目が覚めちゃっただけ。…起こしてごめんなさい」
「大丈夫、…まだ早いから、お休み」
そう言って、私の頬を優しく撫でるさく。
その温かさが心地好くて、また眠りについた。
―喉の痛みが、ひどくならないことを願って。