夜明け前


「―コホコホッ」


少し喉の痛みと息苦しさを感じて目が覚めれば、外はまだ夜明け前。


ほとんどの生き物がまだ眠りについている時間。


とても静かで、昼間の喧騒が嘘のよう。


隣ではまだ深く眠るさくがいて、その綺麗な寝顔を見つめる。


母様が亡くなってから、夜眠れなくなっていたのにさくが気づいて、狭いベッドで手を繋いで眠るようになった。


―他人から見れば、おかしいのかな。


だけど、温もりを感じなければ不安で眠れない。


きゅっとさくの手を握る。


「…しゅー?…眠れ、ない?」


「ん、ちょっと目が覚めちゃっただけ。…起こしてごめんなさい」


「大丈夫、…まだ早いから、お休み」


そう言って、私の頬を優しく撫でるさく。


その温かさが心地好くて、また眠りについた。


―喉の痛みが、ひどくならないことを願って。


< 56 / 145 >

この作品をシェア

pagetop