夜明け前


「―しゅー、起きて」


「―ん、」


「おはよ」


ふぁ、と欠伸をするさく。


「…おは、よ」


朝はいつも苦手だ。


頭がいつまでも眠っていて働かないし、朝ご飯も 食べられない。


だから、


「ほら、起きよ」


さくに手を引っ張られて起こされないと、座ったままでも眠ってしまう。


「朝、ココアでいい?」


「うん」


「ココアだけ?」


「うん」


「なにか食べないと、元気出ないよ?」


「うん」


「…寝てるでしょ」


「うん。…ううん、起きてる」


「…学校で寝ちゃだめだよ」


「…善処します」


「だめなものはだめ」


「むー」


「膨れないの。本当にそんな顔になっちゃうよ」


「それはやだ」


「ふふ」


――今日、ここまでは普段通りだったと思う。


だけどそれが、私のせいで崩れてしまう。


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