夜明け前
「奏音さん、一人でここに住んでるの?」
素朴な疑問だ。
だって、一人で住むにしては広すぎる。
私とさくが加わっても、まだまだ広い。
「俺も思ってた。さっきも居座ってる、とか言ってたでしょう?」
「ん?あー、そのことなんだけど…」
奏音さんが複雑そうな表情を浮かべながら言葉を濁していると、
―ガチャ
「そー、お帰り。腹減った………。あれ?」
ドアの開く音がして、そちらに顔を向ける。
「…綺麗な人」
そう、そこには本当に綺麗な人が立っていて、思わずそう呟いていた。
「あれ、ありがとー。君どこの子?可愛いねぇ」
「…千里、話したばっかりだろ」
はぁ、とため息をついた奏音さん。
「…あー、そうだったっけ。ちゃんと覚えてないや。ま、とりあえずよろしくねー。俺、香宮千里。ちーちゃんって呼んでね」
「あぁ、はい。よろしくお願いします。本城朔乃です。…朔乃でいいです」
「よろしくよろしく。さっくんね」
「……」
さくが少しばかり引いている。
「さく。許してやって」
引き攣り笑いを浮かべるさくの肩に、手を乗せる奏音さん。
「…うん。噛み合わないけど我慢する」