わたるんといっしょ


擦弦楽器という単語自体、聞き慣れない好美だったが、何となく、能にでも使われる楽器なのかと響きから思う。


「んでぇ、好美ちゃんのお友達が、『渉くん』、と」


「そうです、だから……!」


「『助けてほしい』?」


はいっ、と間髪入れずに好美は言ったが、胡弓はどこか気だるげな風に鋏の背で肩を叩いた。


「聞くけど、その『渉くん』は、生きてますカー?」


巨大鋏を軽々持ち上げ、肩たたきに使う胡弓の問いに好美は言葉を呑んだ。


――もしかして、もう。


ひきこさんと共に、闇に呑まれた時点で、渉はこの世のものじゃなくなっているかもしれない。


「っ、生きてます!」


助ける前から、そんな想像してはと好美は訴えてみせたが、胡弓はその答えに苦笑いを浮かべた。


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