わたるんといっしょ
渉の目の前で、ぐるぐると回り続けるひきこさんに目をやる。
ひきこさんの性分からして、止まっていることができないのか、女は右手に人を携えたまま、ぐるぐると。
「……イ……あた……か」
経でも読むかのように、一心不乱に何かを呟いている。
多分は、ここに連れてこられる前に聞いた言葉でも繰り返しているんだろう。
ずずず、と引き摺る音の方が大きく、断定はできないが。
「……」
腐ったヘチマみたいな引きずられ役を見る。その“使い古され加減”は吐き気の一つでも催しそうだが――渉にとっては、気持ち悪いと思わない。
「何も、しないんですか」
あの時のように。
知らずと肩越しに目を向けた。そこに“いる”と感じて。
ひきこさんではない、ましてや怪異と呼ばれるものとも違う。