わたるんといっしょ
「お願い事?」
「そうよー。それを聞いてくれたなら食券……は、優勝するかも分からないから、仮として。ええ、どっちにしろ、丁度、誰かに頼みたいことがあったのよ」
杖で床を叩く。
ブリュンと同じような紋様が広がったかと思いきや、やけに小さい。
手のひらサイズに相応しい出現した物体が、廊下に鎮座する。
「氷中花ですか?」
フラワーアレンジメントの一つ。透明な氷の中に花を咲かせた芸術作品に渉は見入る。
ただ、氷の中の花は蕾のままだ。ずいぶんと大振りな蕾からして、普通に咲く分にも綺麗なのに、もったいないと思う。
「氷じゃないし、花でもないのよ、これは」
ひょいと素手で持ち上げた女性、冷たくないらしく、平気な顔をしていた。