わたるんといっしょ


「『臭い』って、特に何もしませんが」


芳香剤を置くことはない居間は無臭に近い。もしかしたら家人には分からぬ独特な匂いがあろうとも、この藤馬とて、半ば家人。


暇あれば渉の家に居座る、渉いわくの『家族』であるが。


「てめえにゃあ、わかんねえよ。くっそ、いけ好かねえ。“他所もん”の匂いがしやがる」


鼻を摘まみそうなほどに不快感を出す藤馬が意味の分からぬこと言うときは決まって、“人間(常識)では計れない”ことばかりだ。


そんな藤馬と長い月日を共にした渉とて、そういった類いは受容してみせるが、共感まではできない。


桁が違う。
包帯で当てがわられた眼の見る景色は、渉とは違うだろうし、受け止め方も独特なのは致し方がない。


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