わたるんといっしょ
「ほ……い゛ぃ。ほ……い゛ぃぃ」
つむじに、氷塊でも打ち付けられた気持ちとなった。
例の声。
まさか、と瞬時に思い、振り向いた。
「っ……!」
振り向いたことを後悔したのも、また刹那。
化け物――朝見た化け物以上の凄惨たる異形が、渉の背後にいた。
ぺた、ぺた。
濡れたアスファルトが、手の腹から鳴る音を響かせる。
手を使い歩くことは今朝と変わらないが。
「ほし、いぃぃ。ほしい゛いぃ」
今見るそれには、足がなかった。
下半身が引きちぎられたような状態で、長い腕を足代わりにしている。
ほしい、ほしい。と、呪詛を呟きながら、渉を真っ直ぐに、見ていた。
ぱっくりと割れた傷跡のような唇がない口に、瞼がない目。
ほの暗い三点の孔が、渉に狙いを定めているのは嫌でも分かった。