わたるんといっしょ


「くっ……」


後退りをし、止まる。


この化け物に背を向けた途端に、飛び付かれるイメージが湧いてしまったためだ。


化け物相手に人間は敵わない。しかし、ただ突っ立っているだけでは解決には至るわけもなく。


「ほじいぃ、ほしい゛ぃぃ!」


近づく異形。
先刻、化け物の下半身を『引きちぎられた』と表現したのは、中身が溢れていたからだった。


寸断されたならば、中身もろとも分離するはずなのに、力任せに引っ張られたような体は、臓物を垂れ流している。


脊髄が振り子のように揺れ、管一本で繋がるような胃が今にも落ちそうで、はみ出た腸が尻尾のように伸びている。


肉片と血の轍を残しながら、だらしのない死に体が怨嗟をまとって、生者へと近づく。


命を脅かす類いであるのは一目で分かる。目をつけられたらどこまでも追ってくるような、餓えた獣と言ってもいい。


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