わたるんといっしょ


凡人が見ればその異質さに気絶でもしていいものだが。


「……!」


駆け出した渉は、こういった化け物に慣れてしまった故でもあった。


躊躇った後退りを逃げへと変換する。


アスファルトを真っ直ぐではなく、道逸れて山をかけ登った。


急勾配ではないなだらかな斜面ではあるが、ぬかるんでいる。


雨降って地固まるの意味をまた見直したくなるようなぬかるみで、何度もけつまずくが、その度に、手頃にあった杉の木を掴む。


「ぐっ……」


後ろは振り返らない。ただ前を見ても、渉は真っ直ぐには逃げなかった。


蛇行しながら、斜面を登る。


杉の木を曲がり角に見立てるよう、渉は泥まみれになりながら逃走を計った。


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