わたるんといっしょ
自分が外に出て、何かが出来ると奮い起つわけではないが、少なくとも化け物がいるとの注意喚起をし、この場から立ち去ってほしかった。
――くわえて。
「……」
石階段の“あの人の特等席”に、誰もいないのを確認する。
テレサだけではない、春夏秋冬家への来訪者。
こんな大雨で来るわけがない、とは思わない。
――あの人は、雨が降っていることも見ていないから。
現実からの逃避者。
自分の中の世界でしか生きられず、“周りが見えていない”そんな人が、今宵もまたこの階段で『かごめかごめ』を歌うのではないかと、渉は想像した。
そこまでの過程に、化け物があの人を襲わないなどとは考えない。むしろ、逃げない獲物として取り込まれてしまう。
「……、さん」
知らずと漏れたあの人の呼称。
護衛がつくテレサよりも無防備なあの人が心配であり――化け物に遭遇するよりも怖かったかもしれない。
「聞いて、くれますかね……」
僕の、言葉を。
それが無理と自答されるから、怖かった。