わたるんといっしょ
「ワタルくんっ!」
叫ぶ呼び声はその人らしからぬものだから、最初、誰だか分からなかったが。
「せん、せ……」
駆けつけてきた女性が、自分に寄り添ったことで認識する。
夜に伺うと言ったのだ。こうして彼女と鉢合わせてしまうのも可能性としてはあったが。
「僕、ほんと意味ないことばかりしてますね……」
苦笑する渉に、テレサは困惑する。
彼女には分かるまい、今の彼の心境が。
噛ませ犬は自分の特権ではないが、弱い者には相応しい無駄手間。
何てことはない、“僕がいなくとも大丈夫だった”と分かりきっていたことを、目の当たりにしてしまっただけだ。
「ど、どうしたのっ、ワタルくん!頭打ったの!笑い事じゃないわよ、あれは!」