わたるんといっしょ


「冬月、くん……」


懐中電灯で照らしたその人に、渉のみならずテレサたちも緊張の糸を切るようであった。


灰色の着物に狐面。
そんな独特の佇まいをするのは冬月の兄とてそうだが、慣れ親しんだ方としてとっさに学友の方だと思ってしまう。


『貴様は、学園にいた……?』


冬月の兄を知らぬブリュンは、彼の姿をそう捉えるが、首を傾げてもいい口振りは、あれを冬月だとは断定していない。


違う者でも見るかのように。ブリュンが冬月との距離を縮めようとすれば。


「弱いなぁ、あんさん」


はんなりとした口調が、雨に混じる。


傘もささないずぶ濡れながらも、着崩したかのような着物はより冬月の妖艶さを増させる。


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