わたるんといっしょ


払われた。
二の句も告げない内に、青年の手がテレサの首を絞める。


「先生っ」


「くっ……」


青年が持ち手を上げれば、首吊り体のようにテレサの足が宙ぶらりんとなる。


「さぞや不安で怖いだろう?見えない未来、幸せの保証もない先行きに思い馳せて、鏡を見てため息をつくならば――ああ、今の内に死ねばいい。楽に、なれるよ」


「じょ、うだんじゃ……っ」


ないと言う声帯が圧せられる。


青ざめていく顔を自覚しながら。


途端に、放り投げられた。


濡れたアスファルトでスライディングし、草が生えたぬかるんだ土で止まる。


意識朦朧の中――


「にげ……っ」


傘を持って立ち向かう少年の姿を網膜に焼き付けたまま、テレサは意識を失った。


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