わたるんといっしょ


「くっ……!」


息を吸い込み、腹に力を入れて、足の震えを無視した。


真っ直ぐに化け物を凝視し、気張りに似合うように『こんなものは怖くない』と言い聞かせた。


恐怖に慄(おのの)いてはならない。


守る盾がないことに惜しみなど持ちたくはないんだ。


――“アレ”が必要だなんて、思いたくない。


だからこそ、どんな危機に直面しても慄くことは許されなかったし。


「あなたなど、怖くはない!」


自身が呑み込まれたあの“呪われた地”に比べれば、こんな怪異など足元にも及ばない怖さだった。

故に、気張る。
虚勢であっても、一人だけ逃げおおせるだなんて真似をしたくないならば、こうして怖くないと言い聞かせるわけだが。


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