わたるんといっしょ


「…………」


初めて沈黙した化け物の孔(目)が、渉の心境を探るよう凝視している。


「……………………」


長い沈黙。
しかしながら怪異から発せられるおぞましい気配――首もとを冷たい手で、“さわり”と撫でるようなこの感覚は――


「――、あなたのために」


瞬間、虚勢が剥がれた。


たった一言で足元から崩れるよう。傘を取りこぼし、何とか繋いだ緊張の糸で倒れずにはみせたが。


「中指、斬残」


「ぁ……」


けたたましい警鐘が、頭で反芻する。


膝をつき、呆然としながら怪異を見た。


懐中電灯も落とした。怪異の下半身程度しか照らさないのだが、十分だ。


「っ、あ……」


十分なんだ。
“中指がないやけに長い手”が伸びてくるのが分かる。


< 231 / 454 >

この作品をシェア

pagetop