わたるんといっしょ
「…………」
初めて沈黙した化け物の孔(目)が、渉の心境を探るよう凝視している。
「……………………」
長い沈黙。
しかしながら怪異から発せられるおぞましい気配――首もとを冷たい手で、“さわり”と撫でるようなこの感覚は――
「――、あなたのために」
瞬間、虚勢が剥がれた。
たった一言で足元から崩れるよう。傘を取りこぼし、何とか繋いだ緊張の糸で倒れずにはみせたが。
「中指、斬残」
「ぁ……」
けたたましい警鐘が、頭で反芻する。
膝をつき、呆然としながら怪異を見た。
懐中電灯も落とした。怪異の下半身程度しか照らさないのだが、十分だ。
「っ、あ……」
十分なんだ。
“中指がないやけに長い手”が伸びてくるのが分かる。