わたるんといっしょ
夜闇よりも濃い黒。陽炎のように儚い存在ながらも、その存在感は絶大であり、恐怖となって渉の全身をいたぶるようであった。
「あひゃひゃひひゃあ゛ひゃひひゃひゃあ゛あひゃひゃ!」
木霊す高笑いが思い出とだぶる。
死の匂いしかしない呪物が、今度こそ渉を取り込もうとその首を掴む。
「か、はっ」
忘れがたい記憶の再編。あの時は縄であったが、指で絞めるのと何ら変わりない圧迫感。
死が過る。
そうして、死地を眼球裏で見てしまうよう。
「ゃ、だ……っ」
苦しみ、掴む藁がないから、声を漏らす。
目一杯に口を開き、舌を打つ雨で咳き込みながらも。
「死にたく、なん……かっ」
ないと訴えた。
死んでなるものか。
「ぼく、には……っ」
離れたくない家族がいるんだから。
手探りで傘を探す。しかして見つからず、このまま、“ぷちり”と命の糸が切れる最中――