わたるんといっしょ


夜闇よりも濃い黒。陽炎のように儚い存在ながらも、その存在感は絶大であり、恐怖となって渉の全身をいたぶるようであった。


「あひゃひゃひひゃあ゛ひゃひひゃひゃあ゛あひゃひゃ!」


木霊す高笑いが思い出とだぶる。


死の匂いしかしない呪物が、今度こそ渉を取り込もうとその首を掴む。


「か、はっ」


忘れがたい記憶の再編。あの時は縄であったが、指で絞めるのと何ら変わりない圧迫感。


死が過る。
そうして、死地を眼球裏で見てしまうよう。


「ゃ、だ……っ」


苦しみ、掴む藁がないから、声を漏らす。


目一杯に口を開き、舌を打つ雨で咳き込みながらも。


「死にたく、なん……かっ」


ないと訴えた。


死んでなるものか。


「ぼく、には……っ」


離れたくない家族がいるんだから。


手探りで傘を探す。しかして見つからず、このまま、“ぷちり”と命の糸が切れる最中――


< 232 / 454 >

この作品をシェア

pagetop