わたるんといっしょ


「そうー。でもね、ワタルくん、レディに向かって『くせえ』とか言う礼儀知らずな大人になっちゃダメよー」


家族だろうが反面教師。あんな男になるなと注意しつつ、テレサはお茶を飲む。


『ん?マスター、この少年は、わたるんでは?』


「あら、うっかりー。そうよー、わたるんくんね」


「……」


親しみあるからこそのあだ名なんだから、訂正するのを阻まれた。


「そういえば、水晶の中の妖精は、どう産まれるんですか」


机にある水晶を見つめる。手を伸ばして撫でてみれば、花びらが揺らいだ気がした。


此度の元凶でもあった水晶。藤馬曰く、『カラスが光物に集まんのと同じ』だそうで、あの魔縁も当初は渉が持っていたこの水晶に目をつけていたらしい。


結局は、人間をも取り込む怪異なため、昨晩は渉自身を狙ったみたいだが。


テレサとてそれを聞いたものだからこそ、始終謝ってみせた。


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