わたるんといっしょ


スーツに、秋初めには早い茶系の分厚いコートを着た男。営業の出回りスタイルに違いないが、アイロンがけしていないよれよれ感では、先方に嫌な目で見られるだろう。


顔の血色も悪く、眠そうな眼が、渉に気づき、微かに見開く。


「いやぁ、こんにちはぁ」


へこへこした姿勢に相応しい、万年係長のようなガマガエル笑顔でへにゃりと挨拶された。


「あ、こんにちは」


渉とて礼儀正しく挨拶はしてみたものの、強張る肩は、このサラリーマンに警戒心を抱いていたからだ。


人気皆無な山間で、通行する人が珍しいのもあるが、これはあれだ、「知らない人に声をかけられたら」の警戒心に近い。


人間皆優しいと思う、砂糖コーティングの頭でも、『おかしい』と思ってしまう。


< 270 / 454 >

この作品をシェア

pagetop