わたるんといっしょ


「最近、めっきり寒くなりましたねぇ。いやぁ、暑さが恋しいですねぇ」


「そう、ですね……」


破棄のないしゃべり方ながらも、フレンドリーに接してくる男。行きずりならば挨拶程度はするが、男が世間話をするものだから、対話となる。


手を伸ばせば、という距離で語りかけてきた男は、渉を入念に見ているようだった。


「あの、すみません。急いでいますので」


良からぬ気配から逃げるように、渉は男の脇を通り過ぎようとしたが――腕を、掴まれた。


「……!」


「一つ、お聞きしたいことがあるんですよねぇ。いやぁ、すぐに済みますから、答えて頂きたい」


道を聞く前ふりではないのは、掴まれた指の圧迫感から分かる。


獲物を見据えるような、重い瞼の奥がぎらついているようにも思え。


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