わたるんといっしょ


「あなた、自殺志願者でしょう?」


男の問いを聞いた瞬間に、体から力が抜けた。


――なにを。
言っているんだ、この人は。


「いやぁ、分かるんですよねぇ。私は、そういったモノに敏感なものでぇ」


誤魔化すために沈黙したわけではないが、男の中では、渉が自殺志願者であると確定事項らしく――事が進められた。


「死に痛みは付き物ですが、一秒で終わらせますから我慢してくださいねぇ。いやぁ、まさかこんな少年を“救う”となるとは。昨今、若者の死にたがり願望が強いですねぇ」


飄々とした素振り。低姿勢さを忘れずとも、男から漂う空気が、不気味に早変わる。


男の手には、刃があった。 僅かに歪曲する『く』に近い形の鋭利。黒鉄のそれは細く、巨大であり。


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