わたるんといっしょ


取引先でミスをしたサラリーマンさながらの切り替えは、切迫。謝罪要らないといくら言おうと、「こちらの気が晴れない」という面倒なタイプだ。


「じゃあ、ちねっ」


「切腹しますので、介錯をお願いしますっ」


「僕が言ったんじゃないですから、しないでくださいっ」


ピクシーを手で覆いつつ、差し出された刃に待ったをしたのだが。


「あれ、これ……」


黒鉄の刃には見覚えがあった。


「死神の鋏……?」


五十鈴という死神が持つ鋏と同じ素材で大きさともそうだと言えようが、形は違う。


鋏ではなく刃と捉えたように、男の鋏は“片割れ”しかなかった。


鋏(挟み)の名を冠するならばもう一本欲しいところだが、留め具部分にぽっかりあいた穴は、二枚刃を繋ぎ止めるネジすらも行方不明。


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