わたるんといっしょ


「……」


黙ってはいたが、渉の頭では、『死にたくないっ』と叫ぶ人がいた。


「『死にたくない』、それは、自分の命を最後まで“愛せた方”が言うべきセリフであるというのに。自ら、命を粗末にしたものが、結局最後に、そう言うだなんて……。ズルいでしょう」


ズルいだなんて軽い言葉なはずが、今までの話で重く感じられた。


不条理。
自殺するならば、その命をくれ。と嘆くほど生きたい人からしてみれば、命を軽く扱う者は目の敵でもあろうに。


川堀の場合は、そんな彼らを“見比べてしまった”ため、やはり、不条理な死に方をする者を嫌った。


「それでも、死神としての勤めを忘れない私は、生きた人間には関わるなの戒めを胸に、憤りでさえも無視してきましたが。寒い冬の日、私は、とうとう、“許せない人”に出会った」


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