わたるんといっしょ


入店してきた親子連れの声。BGMほどに気にならない音声であっても、川堀の指先が僅かに震えて、反応した。


「その日は、二人。死神には予定鬼籍帳という、人間の寿命が銘記された資料が配布されますが、人の寿命は、時々刻々と変化するものであり、あまり当てにならない、用途とすれば、自分がどの人間の魂を伐採するかの顧客名簿みたいなものでしたが……、あぁ、本当に」


どうして“当たった”んだろう、そう肩が震えているようにも思えた。


「冬の海にて、母と子の二人。無理心中でしょう。私が行き着いた時には、もう幼い子の顔は海の水面をばしゃばしゃと。しかしながら、子と身長差がある母親はまだ腰まで浸かるかどうかの水位。

水の冷たさで唇が青くなっていましたが、そんなの、もがき苦しむ幼子に比べたら、まだマシだ。

分かりますか?もがいていた、苦しんでいた、この意味が」


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