わたるんといっしょ


藁をも掴む思いで、ただひたすらに――


「私を見つけた母親は、言いました」



“助けて”


「……」


「ふざけている、馬鹿げている。それは、あの子が言うべき言葉だろうに……!それを無視し、我が子を身勝手に、道連れにせんと、結局は殺し、挙げ句の果てに、『助けて』だとは……っ、あの子は、最後まで、“もがき苦しんでいた”というのにっ!」


思い出すだけでも憤ることが出来る、惨事。


机でも叩きそうな勢いだったが、怖がるピクシーを見て、自制したようだった。


「すみません、ねぇ。まあ、後は、誰もが想像できると思いますが。その時が、初めて重罪を犯した日となります。いずれは凍死する命でしょうが、私は、その母親の『いずれ』を奪った。

手を下してしまったのですよ。子の報いがため、そうして、体を凍らせる母親の苦しみを無くす慈悲でもあった。私は、生きた人間をこの手で殺しました。凍死ではなく、絞殺で」


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