わたるんといっしょ


それが出来ないのは、言わずもがな。してしまえば、今までやってきたことが、『なんだったんだ』となってしまう。


破棄がなく、力なく笑う男は、見えない自縄をしているよう。


死ぬことがない、苦しむばかりの自縄を。


何とかしたいと思うも、この事項は、既に川堀の中で『完結』しているのだ。


間違っていると分かった上で、する――


曲がった信念は、それ以上曲がらぬし、折れもしない。他人の手が入り込む余地さえも持ち合わせておらず、『もうこのままでいい』と完結した。


「あなたには、嫌われたくはないですねぇ」


その理由を確信したであろう川堀が、コートの襟を正す。


寒いとあってか、店内は暖房が行き届き、冬用であろう川堀のコートは汗ばむアイテムだろうが、川堀はコートを脱がずにいた。


マナー云々で口出すほど、自分は偉くないために黙ってはいた。コートの使い古され具合を見ると、もはや“体の一部”なのかとも思えてくる。


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