わたるんといっしょ
――
「人が死ぬ前にしたいこと上位に、贅沢をする、というのがあるんですよねぇ」
喫茶店にて、丸テーブルを挟んで、川堀は渉と対話する。
昼間と同じブラックコーヒーを飲み、渉はカフェラテを飲む。ピクシーにも飲ませようとしたが、学校終わりの学生が店内にぽつぽついるため、机下で隠すように――膝上に乗せて、角砂糖を与えた。
「贅沢、ですか?」
「えぇ。豪遊の限りを尽くす、そんな、余命分かっているからこその、自己清算。持っているものを自分がいない現世に残したくがない――つまりは、有り金全てを使ってしまおうという、自棄です」
「だったら、あの男性は」
「死にます。いや、正確には、死のうとしているのでしょうねぇ。前ぶれない事故ならまだしも、自分で死ぬ時期を定めているのならば、悔いないように、惜しみなく、世界とさよならするのでしょうねぇ」