わたるんといっしょ
「そんなの……」
ひどい、勘違いだ。
悔いや惜しみなく死ねる人などいない。いくら自身で、死を定めて、あのように豪遊しようが。
「まだ、“見ていない先”があるというのに」
つい、前までは、二十歳までしか生きられなかった自身。そんな自身に当てはめるのはお門違いかもしれないが、死ぬからと言って、何もかも手放せるわけではないんだ。
名残惜しむ。
手離したくない今ないし、掴みたい先があるだろうに。
「そう、悲しそうな顔をすることでもないですがねぇ。あの男に至っては尚更だ。死のうとしているが、まるで、“なっていない”」
自殺の真似事。
呆れたように川堀は言う。
「私は、あの手の輩を幾度となく見てきた。死ぬ死ぬ詐欺だなんて、最近は変わった言葉がありますが、あの男とてそうでしょうねぇ。
死ぬ死ぬと言い続けて、誰も構わなくなった狼少年の成れの果てと言いますか。本気で死んでやる、『俺を信じないあいつらを、見返してやる』と躍起になっているようで。
あの豪遊は、逃げ道を無くすためのものかもしれませんねぇ。無一文となれば、翌日から生活できなくなりますから、嫌でも死にたくなりますものねぇ」