わたるんといっしょ
(五)
建設途中のアパートにたどり着いたのは、空が、夕と夜の取り替えをしよう時刻。
八階建てほどのアパート。柱と床と天井のみで、壁がない剥き出しの屋内は、上に上がるにつれて風をよく通す。
打ちっぱなしのコンクリートであるが、見ようによってはジャングルジムともなろう升目。転落防止用の柵などあるわけもない、五階の升目に男は立っていた。
柱に手を置きつつ、しかしながら、何度も下を覗き込み、満を持すようにして、つま先のみは宙を踏んでいる。
後ろから押せば、そのまま落ちるだろう。
落ちて、死ぬのではないかと渉は恐々したが。
「死にませんよ。あの高さならば」
共に、男の様子を下から窺う川堀は、そう断定する。