わたるんといっしょ
「でも、打ち所が悪かったりしたら」
「半身不随になるでしょうねぇ。まあ、万に一の確率で、死ぬこともあるでしょうが、とてつもなく低い。私から言わせれば、八階建てビルで、どうして五階にいるのか、という点ですが」
「五階でも相当な高さだと、僕は思います」
「ああ、なるほど。投身自殺だなんて、体験も目撃もしない一般人ならば、『あの高さでも死ねる』と勘違いなさっているのですねぇ。それ以上の“余計”は必要ない。“痛そうだから”。なんとまぁ、臆病風に吹かれましたかぁ」
そのせいで、死ぬに死ねないという展開が待っていると男は知らない。
「臆病風だって、飛び降りるならば危険じゃないですか……!」
「いえいえ。仮にもあの男の身投げが“成功した”ならば――死ぬ際には、死神がやってくる。時々刻々と変わる人間の寿命ですが、確実に死ぬる時が来たならば、死神は察する。
遅かれ早かれ。タイムラグはあろうとも、未だに死神が来ないとなれば、“まだあの男は死なない”。臆病風に吹かれたまま、身投げを辞めるか。もしくは、身投げしようと存命するか、どちらかだ」