わたるんといっしょ


死神が来ないからこそ、男の死は絶対ではなくなった。


この場に来るのは、五十鈴なんだろうかと辺りを見回すが、梟(彼女)の姿はない。


渉にとっての家族であり、見本。


そんな彼女がおらずとも、何をすべきかは、教えを乞わずとも知っている。


「パパ……?」


「ピクシーさん。しばらくここで、ジっとしていてください」


塀の上にピクシーを座らせる。


不安げな顔に大丈夫ですと言い聞かせ。


「僕は、お節介であり、馬鹿なんです」


「……。死にませんよ、あの男は」


ああ、だから――前提が間違っているんだと、渉は足先を、ビルへと向けた。


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