わたるんといっしょ


「く、来るなあぁっ!」


その言葉の裏が、僕の時と違うのはよく分かった。


恐怖。
今にも逃げ出したい恐々が、男性を蝕む。


前は死神、後ろは奈落。死に板挟みされた男性は涙を流す。


予定にはない事態。
『こんなはずじゃなかった』と唇を震わせていて、死神から逃げようと、片足で宙を踏み損なう。


大きくバランスを崩したものの、柱にしがみついていたため事なきを得る。


しかしながら、事なき(生き延び)により、男はとうとう。


「た、助けてくれっ」



生きたがった。


助けに来た僕に向けての台詞。聞いた川堀さんが、嘆息したのも無理ない。


またか、と言いたげな。だったら、『また』するんだろう。


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