わたるんといっしょ
夜道は暗いということで、タクシーで春夏秋冬家へ通ずる階段の麓まで帰ってきた。運転手の目もあるため、車内ではピクシーの相手をしてやれなかったが、今見れば、渉の服の中ですうすう寝ていた。
目尻に残る雫を人差し指で拭いつつ、そっとしておく。
「タクシー代まで出してもらって、すみません」
「いえいえ。私が連れ回して、こんな夜になったのだし……五十鈴嬢に怒られてしまいますねぇ」
見えることはない階段の先を見上げた川堀、五十鈴を語る彼は懐かしげに微笑む。
「五十鈴嬢は、恙無いでしょうか」
「はい。いつも忙しそうですが、元気にやっていますよ。――何なら、家に寄りますか?もしかしたら、五十鈴さんがいるかもしれな」
言い切れなかったのは、川堀の悪名を思い出したから。