わたるんといっしょ
「……」
勘繰るのをやめる。
所詮は憶測であり、分かったことで何が得られるわけもない。
階段を登りきり、今日は“あの人”がいなかったと、自身が上った道筋を省みて。
「おかえり、渉」
家族らしい言葉で出迎えてくれた彼女を見る。
「五十鈴さん」
左目を閉じ、長い睫毛がある右目のみでこちらを見る彼女。
黒のミニスカにパレオ。紐で結びつけた奇抜な赤シャツをまとう彼女に、寒くないのかと思う。
「ずいぶんと遅かったな」
「もしかして、待っていてくれたんですか」
外で。
薄着のみならず、脂肪もないスレンダー体型では、さぞかし寒かっただろう。
「待つに決まっている。家族の帰りを待たない奴が、どこにいるか」