わたるんといっしょ
「花見の時から、あなたは煩わしかったですよ、春夏秋冬先輩」
誠一郎は、この瞬間を見ていた。
冬月の背後から覆い被さる黒の口。触手を寄せ集めた泥の波は、冬月のみならず渾沌までも呑み込んだ。
口のついた胃袋と言うべきか。丸まった腹の中に収まった冬月の姿は――生死は、誰も知るよしはない。
「怪異専門の小岩井さんも、ここまで俺のパートナーを殺せませんでしたよ?春夏秋冬先輩が用意した“駒”は凄いですね」
長い前髪から覗く目は、冷めきっていた。
この世全てに諦めを持ったような――
「助けてと言えない悲しい人ですね、誠一郎くんは」